2015-11-30

ヒノキゴケとテラリウム


 京都府立植物園で開催された「苔・こけ・コケ展2015」には、たくさんのすばらしいコケ・テラリウムも展示されていました。 私は、家で世話をするよりも野外へ出かける方が好きなので、生物の飼育も栽培もほとんどしませんが、コケのテラリウムはほとんど手間がかからないので、試しに作ってみたのが上の写真です。
 上は撮影のために覆いをはずしていますが、普段は下のような状態です。


 コケ植物には地中から水や養分を吸収する高等植物のような根がありません。 仮根はありますが、これは体を安定させるためのものです。 光合成に必要な水分などは植物体全体で吸収します。 ですから植えこむ形を整えるために土を使うことはあっても、コケを害する他の生物が紛れ込まないように清潔な植え込み材を使用し、あとは湿度を保つことを考え、コケの種類にもよりますが、むしろ過湿を避け、直射日光に当てなければ、長期間楽しむことができます。
 じつは上の写真の主役(牛さんではありません)になっているヒノキゴケは半年前に取ってきたものです。 下はそのヒノキゴケの自生の状態です(2015.5.20.撮影)。



 ヒノキゴケ( Pyrrhobryum dozyanum )は密な群落を作り見栄えがするので、スギゴケの仲間などと共に、コケ庭にもよく使われています。 関西の園芸家の間ではヤマゴケと呼ばれることもあるようですが、ヤマゴケと呼ばれているコケにはいろいろあって、関東ではホソバオキナゴケのことが多いようです。


 胞子体は茎の中ほどから出ます。 蒴は円筒形で湾曲しています。 葉腋に赤褐色の糸くずのように見えるのは仮根です。 茎の中部以上にまで赤褐色の仮根が見られるのもヒノキゴケの特徴の1つです。



 葉は線状披針形~線形で細く尖り、中肋は葉先に届いています。 葉縁と中肋の背面には鋭い歯が並んでいます。


 上は葉縁の歯を撮ったもので、歯は対になっています。 ただ、葉縁には舷があり、対になった歯の一方はこの舷と重なって葉の背面に突き出している場合が多く、確認し難い場合も多いようです。


 上は中肋背面の歯です。 多くは1つずつですが、写真の右側のように対になっている歯もありました。

◎ ヒノキゴケの葉の断面などはこちらに載せています。