2015-05-31

ムシクサ、ムシクサツボミタマフシ、ムシクサコバンゾウムシ


 上は堺自然ふれあいの森の畑で撮ったムシクサです。 この名前を漢字で書くと「虫草」です。 「虫」とは? それは記事の後半で・・・。
 ムシクサは、いわゆる雑草として、そんなに珍しくもない植物です。 しかし、上の写真でも花が咲いていますが、目立つ花でもなく、小さな植物で、気のつかない人も多いのではないでしょうか。
 しかしこのムシクサ、気付かれないうちに変化が起こっているのかもしれません。 従来、ムシクサは湿地を好む植物でした。 ところが近年は都市部などの乾燥した所に生えるものが現れています。 この乾燥したところのムシクサは、姿はそっくりでも、従来のムシクサとは別系統の外来植物である可能性があります。


 上は花の咲いているところを拡大したものです。 花の径は、咲き方にもよりますが、2~3mmです。 葉と紛らわしいガク片が4枚、花冠は深く切れ込んで4裂し、オシベは2本で、中央に太いメシベが1本あります。 この花のつくりから分かるように、ムシクサはオオイヌノフグリなどと同じ属( Veronica )の植物です。


 上は果実です。 オオイヌノフグリなどの果実と共通点がありますね。 1枚目の写真のムシクサも、まだ緑色のたくさんの果実をつけています。
 上の写真の果実は、もう種子散布間近で、少し裂けかけています。


 上は果実を切断して中の種子を見たものです。


 上の写真の左側はこれまで見てきた果実ですが、右側のように、大きく膨れた果実のようなものをつけているムシクサもよく見かけます。 これまで見てきたように、左側の果実はちゃんと種子もできていて、これで熟した色ですから、右のものの大きさは異常です。
 じつは右のものは虫えい(=虫こぶ)で、ムシクサツボミタマフシという名前が付けられています。 メシベの子房が虫に寄生されて膨れた姿で、名前からするとツボミの段階で寄生される(産卵される)ということでしょうが、いつ産卵されるかは、私は確認できていません。
 「ムシクサ」という名前は、このような虫えいがよく見られる草ということでつけられた名前でしょう。

 このムシクサツボミタマフシ(上の写真の右中央のもの)を切って中を調べてみました。


 上の写真の切断面右上に見えるのが寄生者だと思います。 撮影したのは、2015.5.13.でした。


 9日後の2015.5.22.に切ってみると、蛹になっていました(上の写真)。 この蛹は、体を激しく揺すり、虫えいからこぼれて下に落ちてしまい、行方不明になってしまいました。 虫えいに守られているのに体を激しく揺する能力を持っているのは、もしかしたら二次寄生者がいて、それに対抗する手段かもしれませんね。

 羽化が近いだろうということで、ムシクサツボミタマフシのついているムシクサを持ち帰り、観察することにしました。


 2015.5.29.気がつくと、小さなゾウムシが歩いていました(上の写真)。 虫えいからの脱出が始まったようです。 ゾウムシの体長はどこまでを測ったらいいのかよく分からないのですが、写真のような姿勢で口吻の先までが 2.5mmでした。
 上の写真の左下の虫えいに穴が開いていますが、ゾウムシの体の太さよりも小さな穴で、ここから写真のゾウムシが脱出したのではなさそうです。
 この穴を覗くと・・・


 穴の奥にゾウムシの脚と口吻らしきものが見えます。 脱出のための穴を開けているようです。 脱出の瞬間を撮ることのできるチャンス! とスタンバイして待ち構えていたのですが、その気配を察知されたのか、何の変化も起こらず、根負けしてしまいました。
 あきらめて他の虫えいを切ってみると・・・



 上2枚は同じ虫えいですが、下は別の虫えいです。 同じ株についていた虫えいで、同じように発生が進んでいたようです。 たぶん同じ個体が産卵した卵から発生したものでしょう。


 このゾウムシはムシクサコバンゾウムシだろうと思います。 ムシクサにはミヨシコバンゾウムシも寄生するようなのですが、検索してもその姿を載せている所が見つからず、よく分かりません。 yosiさんから、ミヨシコバンゾウムシはムシクサコバンゾウムシの古い和名であると教えていただきました。 ムシクサコバンゾウムシの学名は Gymnetron miyoshii で、種小名に「ミヨシ」の名前が残されています。(下のコメント)

2015-05-30

カラコギカエデ


 カラコギカエデの「カラ」は唐(から)で中国由来の外来植物、というのではありません。 日本全国の湿り気味の山地に自生する落葉中木です。 名前は、樹皮が剥がれて鹿の子状態になる木であることから、カノコギカエデがなまってカラコギカエデになったとも言われています。 ただし私は、なるほど鹿の子状態だと納得できるカラコギカエデの幹は、まだ見たことが無いのですが・・・。


 上の写真では、同じ花序で果実と花が混ざっているようにも見えますが、その中間の状態が見当たりません。 じつは、カラコギカエデはひとつの花序に雄花と両性花が混生します。 上の写真では、両性花がすっかり果実になり、枯れかけた雄花が残っている状態でしょう。


 上は5月10日に撮った花の状態で、この写真でもよ~~く見ると雄花と両性花が混生しているのが分かるのですが・・・


 上の写真では、長い8本ほどのオシベが目立つ雄花と、長いメシベと短いオシベを持ち、子房が発達しはじめていて2本の角のように飛び出している両性花が確認できるでしょう。


 上は若い両性花です。 花弁はガク片と重なり気味で見分けるのが難しいのですが、5枚ずつあります。 子房はこれらの花弁やガク片に覆われて一部しか見えませんが、有毛です。 この子房が果実になると、2枚目の写真のように無毛になってしまいます。


ヒゲナガハナノミ(オス)


 写真はネコヤナギにいたヒゲナガハナノミのオスです。 メスの触角は鋸歯状で、このような立派なくしの歯状の触角ではありません。
 このネコヤナギのすぐそばには川が流れています。 ヒゲナガハナノミの幼虫は水生ですので、この川で育って羽化したのでしょう。


 上の写真の角度から見ると、前胸の盛り上がりがよく分かります。 体表には細かい毛が密生しています。


 2頭いましたが、どちらもオスでした。

(2015.5.13. 堺自然ふれあいの森)

2015-05-29

カタヤバネゴケ


 下は石の表面に貼り付いていたコケ(上の写真)をはがして、顕微鏡(10×10)で見たものです。


 上の写真、葉の先は長さの1/4ほどがU字型に2裂しています。 また、節から仮根が出ていますが、腹葉はありません。 このような特徴からこの苔はヤバネゴケ科でしょう。 全国でごく普通に見られるヤバネゴケ科にオタルヤバネゴケがありますが、オタルヤバネゴケの葉は1/2ほど深くU字型に2裂しますので、写真の苔はカタヤバネゴケだろうと思います。


 上は細胞をもう少し拡大したものです。 油体はほとんど見当たりません。


(2015.5.20. 東近江市 猪子山公園)

ヤマイモハムシの幼虫


 薄暗い木陰で最初に目にとまったのは、上の写真の赤い矢印で示したものでした。 水っぽい糞のようでした。 何者がした糞だろうかと周囲を注意して見ると、黄色い矢印のものに気がつきました。 よく見るとツル性の茎をかじっています(下の写真)。 上の写真の黄色い○印あたりで糞をして、茎をかじって短くして、写真の位置に来たように思われました。
 写真には写っていませんが、このツル性の茎をたどって葉を見ると、ヤマノイモでした。


 この虫はヤマイモハムシの幼虫のようです。 身を守るのに役立つのでしょうか、背中には糞を背負っています。


 参考までに、この幼虫の成虫も下に載せておきます。 昨年の7月5日の撮影です。 成虫は美しいのですが・・・。



2015-05-28

イヨカズラ


 写真は和歌山県の大阪府に近い加太の、海岸沿いの道路脇に生えていたイヨカズラです(撮影:2015.5.17.)。 イヨカズラはこのような海岸に近い乾いた草地などに生えるガガイモ科の多年草です。
 上の写真では茎は直立していますが、なまえに「カズラ」とあるように、先が伸びるとツル性になります。 なお、名前の「イヨ」は最初に愛媛県(伊予)で発見されたところからということです。


 これまで何度か書いてきたように、ガガイモ科の花は、表面的には単純なように見えて、とても複雑なつくりをしています。 花は5数性で、花冠は5裂し、花の中央にはメシベと5本のオシベが一緒になったずい柱があり、ずい柱の周囲を5個の副花冠が囲んでいます。
 下のような花も混じることがあります。 下は奇形で、花冠は6裂、ずい柱を形成するオシベも6本、副花冠も6個です。



エゴツルクビオトシブミ


 上の写真、エゴノキにたくさんの揺籃がついていて(赤い矢印)、その作成者も写っています(水色の矢印)。


 上は完成している揺籃、そして下は作成中の揺籃です。


 上の写真で、水色の矢印の所で、葉は主脈を除いて切断されています。 この切断場所より下の部分が巻かれて揺籃になるのですが、赤い矢印の所にエゴツルクビオトシブミがいて、巻き上げ作業を始めています。


 上は巻き上げ作業中のメスですが・・・


 途中でオスも加わり、メスは交尾しながら、オスを背負って作業しなければならなくなります。 上になっているのがオスで、首はメスよりも長く、体はメスより小さいようです。
 作業中の揺籃には既に卵が産み落とされているはずですから、この交尾は次の産卵のために行っているのでしょうね。
 なお、このメスはダニにも寄生されています(下の写真の黄色の円内)。 メスもたいへんです。



(2015.5.27. 岩湧山)

2015-05-27

ノミハニワゴケ


 上は倒木上に生えていたノミハニワゴケ Haplocladium angustifolium です。 葉の大きさに比較して、かなり長い蒴柄を持っています。


 上は胞子体をつけていないノミハニワゴケです。 葉の先が長く伸びています。 ノミハニワゴケの葉は乾いても縮れません。


  上は葉を顕微鏡( 10×10 )で見たものです。 中肋が長く葉先から突出しています。


 上は葉身細胞を撮ったものです。 細胞は長菱形で、上端がパピラ(=乳頭:細胞の表面にある微突起)になっています。 パピラと細胞とは高さが異なりますので、パピラを撮ろうとすると、細胞のピントがボケます。

(2015.5.20. 東近江市 猪子山公園)

◎ノミハニワゴケの葉や細胞の実測値や茎の毛葉などの様子はこちらに載せています。


アカガネハムシダマシの交尾


 交尾中のアカガネハムシダマシがいたので撮ろうとすると、交尾を止めて逃げ出そうとしたので、連れ帰りました。 冷蔵庫で冷やして動きを抑えて撮ろうとしたのですが、あまり効果なく、すぐ動きだし、また交尾しようとしました。 上はその時の1枚です。


2015-05-26

ナガハシゴケ


 写真は樹幹に着生していたナガハシゴケです。 名前は漢字で書くと「長嘴蘚」で、上の写真のように、蒴の蓋にカーブした長い嘴があるところからきているようです。 この嘴の曲がり方が、M氏曰く「フラミンゴに似ている」。 私はゾウムシの顔を連想するのですが・・・。


 葉は全縁で中肋はありません。


 上は葉の基部を拡大したものです。 蘚類の葉の基部の左右の隅は他の葉身細胞と形状の異なる細胞からなる場合が多く、この部分を「翼部」と呼んでいます。 ナガハシゴケの翼部は大型で薄壁の細胞からなっています。 この部分は褐色になっている場合が多いようですが、上の写真の場合は若い葉だからでしょうか、褐色ではないようです。


 近くの樹幹には上のようなものも見られました。 蓋が取れていて印象は異なりますが、葉の特徴を調べると、やはりナガハシゴケでした。

(2015.5.20. 東近江市猪子山公園)

モモコフキアブラムシ


 写真はモモコフキアブラムシでしょう。 ヨシの葉にいました。 上の写真の左下隅にはマミーも見えますし、そのすぐ上ではタマバエの幼虫(?)の犠牲になっているものもいます。


 モモコフキアブラムシは秋にモモに飛来して産卵、卵で越冬し、4~6月にモモの葉で観察されますが、夏季以降はヨシなどのイネ科植物で発生するとされています。
 写真は長居植物園内で5月16日に撮ったものですから、モモで発生している時期と重なります。アブラムシには季節的に寄主植物を変える移住型が多く見られるのですが、モモコフキアブラムシの一部には、ずっとヨシに留まる非移住型のものもいるということなのでしょうか。

2015-05-25

ハマボッス



 写真は和歌山県の大阪府に近い加太の海岸沿いの道の脇に咲いていたハマボッスです。 葉は厚く、潮風で乾燥し易い海岸の環境に生きるのに適しているように見えます。
 和名は、海岸性の植物であり、花序を僧侶が使う法具の払子(ほっす)に見立てたところからの名前でしょう。


 上は花を拡大したものです。 花のつくりは、ガク片5、花弁5、オシベ5本、メシベ1本です。 上の写真では、1本のオシベが奇形で、少し花弁化しています。
 ハマボッスはオカトラノオ属の植物です。 花序が長い穂になっているのとなっていないのとでは、ずいぶん印象が違いますが、たしかに子房の丸いところなどは似ていますね。
 オカトラノオ属は、従来からはサクラソウ科でしたが、APG分類体系(第2版)ではヤブコウジ科に移され、APG植物分類体系第3版ではヤブコウジ科がサクラソウ科にまとめられました。