2015-08-31

カガミゴケ


 切株の樹皮についていたカガミゴケ( Brotherella henonii )が胞子体をつけていました。


 カガミゴケは湿っても乾いても、その姿はあまり変わりません。 葉はやや扁平に付き、つやがあります。 カガミゴケの和名は、このつやを鏡に見立てたものでしょう。 同様なつやはツヤゴケ属のものにもあり、外形も似ているのですが、肉眼的にはカガミゴケの葉の先端は、上の写真のように、すべて下向きに曲がっています。


 カガミゴケは横に這って広がり、羽状に平たく枝を出します。 上の写真の左には、付け根に苞葉を伴った蒴柄が写っています。 胞子体はこのように側生します。


 蒴はやや曲がった円筒形をしています。


 蒴歯は2重で、各16本です。


 葉は卵状披針形で、やや舟状にくぼんでいます。 縁が光っているのは、周囲から照らしているからで、撮り方の問題にすぎません。


 葉の先は次第に細くなって尖り、縁には歯があります。 同じナガハシゴケ科のナガハシゴケなどは、葉形はよく似ていますが、この歯は無いか、ほとんど目立ちません。
 葉身細胞は線形です。


 葉の基部の細胞は黄褐色に染まり、翼細胞は大きく膨らんで目立ちます。 中肋はありません。

(2015.8.27. 金剛山)

◎ カガミゴケの各部の長さや蒴をもう少し詳しく観察した結果などをこちらに載せています。


2015-08-30

オトシブミ・アシナガオトシブミ




 上はヤマハンノキにいたオトシブミのメスです。 オスは頭部がもっと長くなります。
 近くに計3頭いましたが、手の届かない所やすぐ逃げられたりで、モデルになってくれたのはこの個体だけでした。 近くに揺籃は見つけることはできませんでした。(2015.8.23. 金剛山)

 そして下は、オトシブミと配色はそっくりですが、頭部の形態などが異なるアシナガオトシブミの、これもメスだと思います。 いたのは、手の届くところに葉 が無かったので自信は無いのですが、アオガシのように思いました。 ただし1頭だけでしたし、たまたまそこにとまっていただけかもしれません。 (2015.5.27. 岩湧山)
 アシナガオトシブミは揺籃づくりの様子をこちらに載せていますが、オトシブミとの比較のため、今年撮った写真を掲載しておきます。




2015-08-29

サルナシ 食べ頃です!


 サルナシはマタタビと同属(Actinidia)のツル性の落葉植物です。 この時期、山ではサルナシの実が熟していて、たいへんおいしいものです。 熟した果実は、柔らかくなっていて指で触っても分かるのですが、写真のように緑色をしたままなので、知らない人はまだ熟していないと思い、通り過ぎてしまうようです。


 熟した果実が赤系統の色に変化するのは、多くは鳥へのサインで、食べてもらって種子を運んでもらうためです。 サルナシの実は、鳥に食べてもらうのではなく、ほ乳類に食べてもらって種子を散布してもらおうとしているようです。 そのため、発達した臭覚を持つほ乳類には、色ではなく、芳香で熟したサインを送り、果肉もほ乳類好みの味になっています。
 サルナシは「猿の梨」という意味でしょうが、実際にサルやクマなどはこのサルナシの実をたいへん好みます。 私もほ乳類の一員ですから、独り占めにならないように少しだけですが、おいしくいただきました。


 じつはキウイフルーツも同じマタタビ属です。 サルナシの果実の断面(上の写真)を見ると、キウイフルーツそっくりです。 ただ、店頭に並んでいるキウイフルーツは運搬のために柔らかく熟す前に収穫していて酸味が強いですし、未熟な果実をしばらく置いて柔らかくなったものより木で完熟させた果実の方がおいしいのは理の当然です。

(2015.8.28. 金剛山)

2015-08-28

ソウシチョウの大きな群

 大阪府と奈良県の境に位置する金剛山の、山頂から北に伸びる尾根の東斜面、つまり奈良県側で、ソウシチョウのとっても大きな群に出会いました。 多くは藪に潜っているので個体数は分かりませんが、個体の密度は高く、10分ほど歩いても周囲から声がやかましく聞こえる群でした。 春に巣立った若鳥も混じり、今が一番大きな群の時期なのかもしれませんが・・・。
 以前からいることは知っていましたが、しばらくの間にこんなに大きな群になっているとは驚きです。



 写真は 2015.8.23.に、トンボを撮りたくて持参した望遠レンズで撮ったものです。 下2枚の個体は上2枚の個体より胸部が濃色で、よく鳴いていました。 上がメスで下がオスでしょうか。



 鳥は縄張りを作るためやオスがメスを呼ぶためには鳴く必要があるのでしょうが、それ以外の時期には、鳴くことは自分の存在を知らせて敵を呼び寄せることになり、そんなには鳴かないものだと思っていました。 今の時期にソウシチョウがこんなにもよく鳴くのはなぜなのか、不思議です。 見通しの悪い藪の中で集団を維持するためでしょうか。 それとも年に何度も繁殖するのでしょうか。

 ソウシチョウは、外来生物法で特定外来生物に指定されていて、「日本の侵略的外来種ワースト100」になっています。 江戸時代から飼い鳥として入ってきていたようですが、雑食性で扱いやすく、美しい鳥であることもあり、1980年以降に本格的に輸入されてきたものが、販路やエサ代に困ったのか、放鳥した悪質なペット販売業者もあったようで、あちこちで野生化し、増えています。
 個体数を増やしている外来生物の多くは、複雑な生態系を持つ安定した自然環境には少ないのですが、ソウシチョウは安定した林でよく観察されています。 今回の撮影場所は植林ですが、よく手入れされていて、低木層以下がとてもよく発達している林ですし、前に載せたソウシチョウ(こちら)は箕面の山中で撮ったものです。
 ソウシチョウが増えることで、林の生態系が変化することが懸念されています。 特に茂みの低い所に巣を作るオオルリやウグイスなどは、営巣場所が競合するため、ソウシチョウに駆逐されてしまうのではないかと心配されています。

2015-08-27

ウスバゼニゴケ


 上はヒメジャゴケに隣接して育っていたウスバゼニゴケ( Blasia pusilla )です。 左上や左横に写っているのはヒメジャゴケです。 光の当たり具合もありますが、ウスバゼニゴケの翼部の薄さが感じられます。
 ウスバゼニゴケはいつも湿った所に生えています。 採集して机の上で調べだすと、どんどん乾燥して縮れてきました。


 上は腹面から撮ったものです。 葉状体は薄く、濃い緑色の小さな楕円形の部分はラン藻(ネンジュモ)が共生している場所です。 また注意して見ると、これとほぼ同じ大きさの、色は葉状体の他の部分とあまり変わらない鱗片も散在しています。


 上は左がラン藻が共生している部分で、右が鱗片です(顕微鏡の倍率は 10×10 )。 ピントは鱗片に合わせています。


 上はラン藻が共生している部分の拡大です。 このようなラン藻との共生関係をもつ苔類は他には無く、特異な生態として知られています。


 上は表皮細胞を撮ったものです(顕微鏡の倍率は 40×10 )。 細胞壁は薄く、油体はありません。

(2015.8.23. 金剛山)

2015-08-26

マルモンツチスガリ


 オミナエシに来ていた写真の蜂は、ゆっくり写真を撮らせてくれませんでしたが、マルモンツチスガリ( Cerceris japonica )だと思います。
 ツチスガリの仲間は昆虫を狩る蜂で、マルモンツチスガリはコハナバチ類を狩るようです。 写真のマルモンツチスガリは蜜を吸っているようですが、訪花するコハナバチを狙って花に来ることも多いようです。


(2015.8.15. 大阪市立長居植物園)

2015-08-25

ヒメジャゴケ


 上はヒメジャゴケ( Conocephalum japonicum )で、左が雄株、中央から右が雌株です。 葉状体は2叉状に分枝しています。


 上は葉状体の表面を拡大したもので、ジャゴケよりは小さいものの、6角形の明瞭な区画があります。 気室孔の周囲は白っぽくなっていて、それが1枚目の写真のような倍率だと、白点状に見えているようです。


 上は雌株です。 中央と右上にある円形のものは、雌器托になっていく部分だと思います。 ちなみに、属名の Conocephalum はギリシャ語の conos(円錐形)+cephale(頭) に由来していて、雌器托が円錐形をしているところからのようです。


 上は雄株です。 たくさん見られる小判状の膨らみは雄器托です。


 葉状体を腹面から見ると、雌株(上の写真)でも雄株(下の写真)でも、紅紫色の小さな鱗片がまばらに並んでいます。


(2015.8.23. 金剛山)

 ヒメジャゴケは晩秋にたくさんの無性芽をつけます。 無性芽には円盤状と粉芽状の2型があり、円盤状の無性芽はこちらに、粉芽状の無性芽はこちらに載せています。


2015-08-24

メバエ科の一種




 印象的な顔ですが、触角や腹部の形態を見るとメバエ科のようです。 ネット検索すると、「一寸のハエにも五分の大和魂・改」に似たものが載せられていて(こちら)、ヤマトクチブトメバエの近縁種か? となっています。 メバエ科も図鑑による同定が難しいグループのようです。
 メバエ科の多くの種の幼虫は、スズメバチ、ミツバチ、マルハナバチなどの社会性のハチの幼虫に寄生して成長するようです(内部寄生)。

(2015.8.15. 大阪市立長居植物園)

2015-08-23

シゲリゴケ

 この記事は当初ヤマトクサリゴケとしていましたが、メールでシゲリゴケであろうと教えていただき(記事の下のメモ参照)、文章の一部とタイトルを変更しています。


 写真はシゲリゴケ( Cheilolejeunea imbricata )です。 今回の“ものさし”は私の掌の皮膚隆線(掌紋)です。 ちなみに、写真付近の私の掌紋のピッチは、約0.5mmです。



 上の2枚は腹面から撮ったものです。 背片は卵形で全縁、円頭です。 腹片は背片の1/2ほどの長さの矩形で、歯牙があります。 腹葉は茎径の2~2.5倍幅で、1/3~1/2まで狭く2裂しています。


 上は背片の葉身細胞です。 油体は各細胞に2個あるようですが、写真では被写界深度の関係で、ほとんどの細胞で1個しか写っていません。

(2015.7.15. 高槻市 摂津峡)

(メモ)
 背片のサイズが図鑑に記載されているヤマトクサリゴケ( Cheilolejeunea nipponica )にほぼ一致していたのですが、コケのサイズは生育環境などでかなり変化し、写真は少し小型のシゲリゴケであったようです。 ヤマトクサリゴケは腹片キールが丸みを帯びていて、第1歯は勾玉状に曲がるとのことです。



2015-08-22

ヤドリコハナバチの一種


 オオセイボウを撮った同じ所に、写真のような蜂も来ていました。 体長はオオセイボウの半分ほどですが、黄色いオミナエシを背景に、赤い腹部はよく目立ちます。




 この蜂はコハナバチ科のヤドリコハナバチ属( Sphecodes )のようです。 ハラアカヤドリハキリバチ(ハラアカハキリヤドリ)などのハキリバチ科ヤドリハキリバチ属の蜂も腹部が赤いのですが、この蜂は前翅の中脈が弧状に強く湾曲しており(下の写真)、コハナバチ科に間違いないでしょう。 ただしヤドリコハナバチ属は、九州大学の目録には51種が登録されているようですし(もっと増えているかな?)、「日本産ハナバチ図鑑」にも20種が載せられていて、互いによく似ていて、写真からでは種名はお手上げです。


 ヤドリコハナバチ属の蜂は、他のコハナバチ科に労働寄生するようです。


2015-08-21

アオハイゴケ


 上は渓流に突き出た岩に生えるアオハイゴケ( Rhynchostegium riparioides )を真上から撮ったもので、画面の右は水面です。


 上はもう少し接写したものです。 あちこちに泥がついていますが、少し増水すれば水を被るのでしょう。 アオハイゴケが見られる多くは、そのような水際です。


 アオハイゴケは変異の大きい種で、もう少し円い葉の方がよく見られるようです。 中肋は葉の中部以上に達しています。



 葉の縁には全周に小歯があります。 葉身細胞は長楕円形~線形で、やや蛇行している細胞も見られます。

(2015.7.15. 高槻市 摂津峡)