2016-08-04

クロゴケ



 蘚類の分類では蒴の様子が重視されます。 子孫を作ることに関係した部分は容易には変えられず、それだけ本質的な違いを反映しているということでしょう。
 クロゴケ Andreaea rupestris の蒴は、他の多くの蘚類に見られる蒴とはかなり異なった特徴を持っています。 クロゴケの蒴は、蓋が取れて胞子が出るのではなく、先端はくっついたままで4裂し(上の写真)、その隙間から胞子を出します。 また、蒴柄はとても短いものです。
 なお、これは乾燥した環境に対する適応と考えられますが、胞子は胞子のうの中で細胞分裂を起こし、多細胞となってから散布されます。
 その他にも、多くの蘚類の原糸体は糸状なのに対し、クロゴケの仲間は多列の細胞を含んで葉状となるなどの特徴があり、系統上は他の蘚類とはかなりかけ離れた位置にあると考えられています。


 クロゴケはその名のとおり肉眼的には黒っぽいコケです。 北海道から九州までの高地の日当たりの良い岩の上などに生じるコケで、上の写真の黒っぽいのがクロゴケですが、写真の場所は亜高山帯に位置していて、周囲は針葉樹に囲まれています。


 上は左が乾いた状態で、右が湿った状態です。 湿らせると葉が開き、生長している部分は緑色が見られますが、他は色が薄くなる程度です。 1枚の葉の長さは1mmたらずです(スケールの数字の単位はmmです)。


 上は1枚の葉を顕微鏡で見たものです。 鈍頭で、中肋は見られません。

(2016.7.21. 北八ヶ岳)

◎ 裂ける前の蒴をつけたクロゴケをこちらこちらに載せています。