2016-08-05

フジノマンネングサ



 写真はフジノマンネングサ Pleuroziopsis ruthenica でしょう。 亜高山帯のコケは、ルーペなどを使わなくても種名がすぐ分かる大きなコケも多いのですが、このフジノマンネングサもそのようなコケです。 しかも密生した大きな群落をよく作りますから、目立ちます。


 地中を這う茎から立ち上がる二次茎(地上茎)は高さ4~8cmで、上部で細かく枝分かれし、全体が樹状になります(上の写真)。 全体の姿はコウヤノマンネングサにも似ていて、分類学的にはコウヤノマンネングサ科に入れられたり、フジノマンネングサ科に分けられたりしています。


 二次茎は薄い膜状の葉(茎葉)で覆われているようです。


 枝には葉がびっしりとついていますが・・・


 枝につく位置によって、葉の大きさには違いがあります(上の写真)。 中肋は葉先近くに達していて、縁にはほぼ全周にわたって歯があります。 下は上の写真の小さい方の葉の先端部分です。


 中肋の背面上部には少数の鋭い歯があります。


 蒴をたくさんつけると元気を失うようです。 蒴柄は赤褐色です。


 蒴は湾曲しています。

(2016.7.20. 北八ヶ岳)

-----------------------------------------
(以下、2018.7.7.に追加)

 コウヤノマンネングサフロウソウの二次茎や枝の表面には多くの毛葉があるのに対し、フジノマンネングサの枝の表面には1~4細胞の高さの薄板が数多く畝状に縦に並んでいます。 このことを確認しようと、2017.6.15.に採集したフジノマンネングサの標本で、枝の断面を作ってみました。 さすがに1年以上前の標本ですから、薄板を形成している細胞を含め、細胞壁の薄い細胞は縮むなどしていて元の姿には戻りませんでしたが、下の写真のように、枝の周囲に薄板らしきものがあることは確認できました。
 下の2枚は細い枝と太い枝の断面です。 倍率は異なりますが、上の写真の方が細胞が大きく、つまり拡大率が高く、細い枝の断面です。 太い枝の断面には、ピントは合っていませんが、葉の断面も写っています。