2016-05-31

ミドリヒョウモンの幼虫



 写真はミドリヒョウモン Argynnis paphia の幼虫です。 前胸にとても長い突起を持っています。 食餌植物はスミレ類です。

(2016.5.15. 枚岡公園)

2016-05-30

トサノゼニゴケ(雌株)


 上はトサノゼニゴケ(トサゼニゴケ) Marchantia emarginata ssp. tosana で、雌器托を出しています。 ゼニゴケとは同じ属ですが、雌器床の指状突起はゼニゴケのようには細くならず、扁平で凹頭です。
 和名の「トサ」は土佐つまり高知県のことですが、福島県以南の分布です。 日本のコケ類の研究は、明治時代の、牧野富太郎博士(高知県出身)の土佐での採集調査あたりから始まっていて、和名に「トサ」のついたコケがいくつかあります。


 葉状体はゼニゴケよりも暗い緑色でした。

 このトサノゼニゴケも、5月24日のコケサロンで撮影させてもらったものです。

◎ 雄器托をつけた雄株はこちらに載せています。


2016-05-29

ルリチュウレンジの産卵

 ハバチ(葉蜂)の仲間(ミフシハバチ科)のルリチュウレンジ Arge similis の幼虫は、ツツジ類の害虫として知られていますが(こちら)、今回、ヒラドツツジに産卵している様子を観察することができました。


 卵は葉の縁から産卵管を差し込んで葉肉内に産み付けられます。 特に厚くもない葉に器用に産卵管を差し込めるものだと感心しますが、葉縁に沿って歩きながら、気にいった場所をみつけると、比較的簡単に産卵管を差し込んでいるようでした。


 上の写真では、葉に差し込まれている産卵管が、かすかにですが、透けて見えているように思います。


 場所を変えて何度も産卵してくれるのですが、どうしても後脚が邪魔になります。 上の写真では蜘蛛の糸まで邪魔をしていますが、卵と共に何かを注入しているのでしょうか、葉が円く変色しています。


 産卵管が写るかと、産卵管を抜いた瞬間を狙ってみたのですが、ダメでした。


 上は産卵痕です。 1枚の葉に複数の卵を産みつけるようです。

(2016.5.15. 東大阪市 枚岡公園)

2016-05-28

モントリオールに行ってきます

 伊勢志摩サミットも無事終わりました。 カナダのイケメン首相(トルドー首相)は、カナダの首相としては稀なフランス語圏(のモントリオール)出身ですので、訪日のお礼に(と勝手に思って)今日からモントリオールに行ってきます。
 娘の家族がモントリオールに住んでいるので、そこに2週間ほど滞在して孫と遊んだりするだけのことですが・・・。 空いている飛行機に安く乗せてもらおうとしたために長期になってしまいましたが、ホテル代もいらないことですから、ゆっくりモントリオールの自然を味わってきます。
 ブログに関しては、載せたい写真はいっぱいあるのに、今回は自動更新させる記事を準備する時間的余裕がありませんでした。 そこで今回は、毎日とはいかないでしょうが、クラウド環境を利用してモントリオールからのブログ更新を試みてみようかと思っています。 どうなるかわかりませんが、更新されない日が何日も続くようなら、うまくいかなかったのだと思ってください。

ユミダイゴケ


 上はユミダイゴケ Trematodon longicollis ですが、写っているのはほとんどが蒴です。


 上は植物体と蒴を写しましたが、目立つ蒴に対して植物体は小さく、蒴が無いとなかなかその存在が分かりません。
 蒴は胞子が入っている「壺」と、その下の蒴柄に続く「頸部」からなります。 上の写真では壺は褐色を帯び、頸部は黄緑色になっていますので、太さだけでなく色でも区別できます。
 上に書いたように、ユミダイゴケは蒴が大きく弓型に曲がっているのですが、特に頸部が長く弓型に曲がっています。 和名の意味は、弓型の大きな蒴から「弓大」なのでしょうか。 それとも壺を載せている頸部を台と見て「弓台」なのでしょうか。


 上は帽を外して深度合成したもので、胞子が飛び散っています。 蓋は帽の中に残っていて少し見えています。


 上は自然に帽(と蓋)が取れている蒴を正面近くから見たものです。 赤褐色の蒴歯は1列 16本です。 少し分かり辛いですが、各蒴歯は基部近くにまで縦に深く裂けています。


 上は蒴歯の上部を見たもので、たくさんのパピラが見られます。


 上は胞子です。


 上は葉です。 葉は長さ3~4mmで、幅広い鞘部から線状に伸びているのですが、写真のように曲がっていて真っ直ぐになってくれないので、1枚の葉の形を顕微鏡下で撮るのはあきらめました。


 上は葉身細胞です。

 ユミダイゴケは新しく開かれた道などでよく見られるのですが、ここに載せた写真は、岡山コケの会第137回コケサロン(5月24日)での撮影と、そこから少しいただいたものを撮りました。

こちらには実際に生えていた、もう少し若い蒴をつけたユミダイゴケを載せています。


2016-05-27

タチヒダゴケ(蒴の観察など)


 住宅地のすぐ傍にもタチヒダゴケ Orthotrichum consobrinum はありました。(撮影:2016.5.20.堺市南区茶山台)


 近寄ってみると、胞子を出し終えた蒴や、いままさに胞子を出している蒴もありました(上の写真)。


 上は東近江市の猪子山公園で昨年の5月20日に撮ったもので、とてもよく似た状態です。 前に12月上旬~1月下旬のタチヒダゴケの蒴の変化を載せましたが(こちら)、これらを総合すると、1月頃から胞子を出しはじめたタチヒダゴケは、そろそろ胞子を出し終わる時期に来ているようです。


 上は胞子をほぼ出し終えた蒴を、ほぼ真上から見たものです。 8本の細い糸状のものが見えます。 平凡社の図鑑の解説によると、「内蒴歯は基礎膜がなく、歯突起は細くて外蒴歯と同長」とありますが、この細い糸状のものが内蒴歯の歯突起なのでしょう。 外蒴歯は反り返っています。 この外蒴歯は8枚のようにしか見えませんが・・・。


 上は8枚に見える外蒴歯のうちの1枚をみたものですが、こうして見ると、ほぼ中央にまで切れ込みのある隣り合った2枚の外蒴歯がぴったりくっついて、1枚のように見えているようです。 図鑑では「対になっている」と表現されています。
 外蒴歯の横にある細長いものは内蒴歯の歯突起で、色の濃い丸いものは胞子です。


 蒴の中央部には沈生気孔が見られました。 少しゴミが多くなってしまいましたが、上は沈生の様子が分かるように斜め上から気孔を撮ったものです。
こちらではタチヒダゴケの蒴の横断面を作り、気孔を断面で観察したり、蒴の内部を見ています。


 上は胞子です。 胞子の表面は細かい突起に覆われているようです。

2016-05-26

ドクガの幼虫


 写真はドクガ Artaxa subflava の幼虫です。 写真はクリの葉にいるところですが、食餌植物は多岐にわたります。


 どんな蛾を見ても「キャー 毒蛾!」という人もいますが、触れてひどい目に合うのは、ドクガ科の数種など、ほんのわずかです。 危険なものをしっかり覚えておくと無暗に恐れる必要はありません。

(2016.4.22. 堺自然ふれあいの森)

◎ ドクガの成虫はこちらに載せています。

2016-05-25

タケカレハの幼虫


 上はタケカレハ Euthrix albomaculata の幼虫です。 頭部付近と尾部付近に毒針毛があり、皮膚の柔らかい所につくと面倒なので、素手では触れない方が良さそうです。


 いじめると上のように円くなります。 毛の無い腹面を隠して防御しているのでしょうが、この姿勢でも腹に接している頭部付近の毒針毛が腹部に刺さることはないのでしょうか。

(2016.5.15. 東大阪市 枚岡公園)

※1 ケムシの「毛」の役割については、杉浦真治さんのおもしろい研究があります
  → こちら“Hairs as anti-predator defences
※2 タケカレハの成虫はこちらに載せています。


2016-05-24

胞子を出しているサヤゴケ



 ちょうど胞子をばらまきはじめたサヤゴケ Glyphomitrium humillimum です。 緑色の胞子と赤い蒴歯のコントラストがいいですね。
 平凡社の図鑑では、サヤゴケの蒴歯は1列で16本となっています。 しかし上の写真では蒴歯は8本のように見えます。 たぶん横に並んだ2本ずつがぴったりくっついているのでしょう。 上の写真でもよ~く見ると、8本に見える蒴歯のそれぞれの中央に細い線があるように見えます。
 上は5月20日に堺市南区茶山台で撮ったものです。 サヤゴケが胞子を出すのは、ちょうどその頃のようで、昨年の6月上旬には空になった蒴が見られました(こちら)。

(以下、追記)


 5月15日には上のような状態で、まだ帽を被っていました(東大阪市の枚岡公園にて撮影)。

 これよりもっと若い、まだ蒴が膨らんでいない状態の、12月に撮ったサヤゴケをこちらに載せています。

2016-05-23

キマダラヒゲナガゾウムシ


 写真はキマダラヒゲナガゾウムシ Tropideres naevulus です。 樹液の出ているコナラの幹をウロウロしていました。 上翅後部に白色斑紋が2対あるのが特徴です。
 伐採木や倒木によく集まり、全国に分布しますが、模様には地域変異があるようです。

(2016.5.14. 堺自然ふれあいの森)

2016-05-22

フジウロコゴケ


 写真はフジウロコゴケ Chiloscyphus polyanthos です。 多くの場合は清流中でもつれあっているコケですが、広げて撮りました。 茎は不規則に分かれていて枝は少なく、仮根はほとんどありません。


 葉は互いに少し接し、茎に縦についています。 葉の縁は全縁で、葉頂は円くなっています。



 腹面には上の写真のような小さな腹葉があります。 腹片はありません。


 上は葉身細胞です。 長時間暗い所へ放置していたため、ほとんどの葉緑体が細胞壁に寄ってしまいました。 それでも細胞壁は薄く、トリゴンも発達していないことは分かります。

◎ このコケは KOBEコケ展で生品展示されていたものを、出展者にお願いし、少しいただいたものです。

(以下、2017.5.17.追記)
 下は、水が流れ落ちる岩の表面に育つフジウロコゴケです。
 (撮影:2017.3.26. 徳島県海陽町 轟九十九滝)



◎ フジウロコゴケはこちらにも載せています。


2016-05-21

泉北ニュータウンにもオオシラホシハゴロモの幼虫?


 写真はオオシラホシハゴロモ Ricania quadrimaculata の幼虫ではないかと思います。 昨日(5月20日)堺市南区の泉北ニュータウン内の公園でみつけました。


 オオシラホシハゴロモについては、川邊透氏が、大阪市立自然史博物館友の会発行の「 Nature Study 」の今月号(62巻5号)やむし探検広場に載せておられます。 それによると、本種は台湾に生息する大型のハゴロモです。 日本国内ではほとんど見つかっておらず、川邊氏の発表以前では、正式に発表された成虫の記録としては 2012年に兵庫県川西市でのオス1頭(月刊むし No.493)のみで、インターネット上でも昨年7月の岐阜県の記録(こちら)以外には見当たりません。


 写真の幼虫の体長は、腹端の綿状のロウ物質が多くて正確に測れませんが、3mmほどです。 川邊氏の昨年6月17日撮影の幼虫によく似ているのですが、オオシラホシハゴロモのホストはクリのようです。 今回みつけたのはヒラドツツジで、この公園にクリの木があることを私は知りませんし、少なくとも幼虫がいた周囲数mにはクリの木は無く、クリの木から落ちて来たとは考えられないので、タイトルには「?」をつけました。


 最初に見つけた時は上のような状態で、枝にくっついてロウ物質で体を完全に隠していました。

 じつは同日に同じ公園で、下のような幼虫も見つけています。


 上はアラカシの地上1.8mほどの葉の裏にいたもので、これもハゴロモ科の幼虫の後姿に違いないでしょう。 顔を撮ろうと少し動かした瞬間、ちょうど常緑樹の落葉の時期だったらしく、幼虫のいた葉がポトリと落ちてしまい、地面をいくら探しても、もう幼虫は見つけることはできませんでした。 そんなわけで、幼虫の顔は全く確認できていないのですが、よく見られるアミガサハゴロモの幼虫ベッコウハゴロモの幼虫とはロウ物質の様子が異なります。
 この幼虫は、オオシラホシハゴロモの、最初の写真より少し生長した幼虫の可能性もありますが、やはりクリの木は近くに無ありませんし、体の色も濃いとしたら、BABAさんが載せておられる、アミガサハゴロモに似て異なる幼虫(こちら)の可能性もあります。
 いずれにしろ、オオシラホシハゴロモの成虫が見られるのは真夏のようですので、これからも観察を継続したいと思っています。 この夏はハゴロモがおもしろい! かな?

-----(以下、2016.6.16.追記)----------------------------------------------------

 間違いないであろうオオシラホシハゴロモの幼虫に出会えました。 残念ながら、場所は既に報告されている、いても当然の場所です。



(2016.6.15. 大阪府能勢町初谷)


2016-05-20

マルフサゴケ


 写真はマルフサゴケ Plagiothecium cavifolium でしょう。 土の斜面に生えていました。 和名を漢字にすると「丸房蘚」で、サナダゴケ科のコケは葉が扁平につくものが多いのですが、マルフサゴケは上の写真のように葉が丸くついているところからの名前でしょう。



 葉に注目すると、深く凹んでいて、先は急に尖っている葉が多く、先が反り返っている葉もあります。 葉は乾いてもあまり縮れません。
 平凡社の図鑑では葉の長さは1.3~2.0mmとなっていて、これもほぼ一致します。 ただ、蒴柄が平凡社では長さ10~15mmとなっていますが、上の写真では3cmほどあり、平凡社の2~3倍の長さです。 3cmほどの長さの蒴柄を持つものはサナダゴケ科ではオオサナダゴケモドキミヤマサナダゴケなのですが、どちらも他の特徴がぴったり一致しないようですので、条件がそろって蒴柄がよく伸びたことにしておきます。


 サナダゴケ科の中肋は2叉しています。


 葉の下延部の細胞は、葉基部の他の細胞と明瞭な違いは無さそうです。 葉身細胞は線形で、やや厚壁です。

 平凡社の図鑑には、マルフサゴケは「非常に変異の大きい種で、他種と混同されることがある。」とあります。

(2016.4.29. 神戸市立森林植物園)

こちらでは蒴歯の見える蒴をつけたマルフサゴケを載せています。