2017-08-23

ハクモウコモチゴケ

 8月20日に大阪市立自然史博物館の特別行事「標本の名前を調べよう」がありました。 この行事は、甲虫、ハチ、キノコ、コケ、化石などなど各分野の専門家に標本を同定していただけるというもので、私も名前の分からなかったものや同定に自信が無かったものなどを数点持って行きました(特にコケは顕微鏡を使ったり、同定に時間がかかるもので、マナー的には一人5点まででしょう)。 ここに載せたハクモウコモチゴケも、そこで同定していただいたものです。


 上は6月13日に北八ヶ岳で撮影したもので、乾いた状態です。 ハクモウコモチゴケ Iwatsukiella leucotricha は亜高山帯以上の針葉樹に着生するコケです。


 茎に丸くついた葉は湿らせてもほとんど開きませんでした(上の写真)。 黒い背地にすると、葉の白く長い鋭尖部がよく目立ちます。


 枝の幅は葉を含めて 0.2mmほどです。


 葉は凹んだ卵形~広卵形の部分は 0.3mmほどですが、先端は急に細くなり、透明な鋭尖部を含めると、上の写真では 0.8mmほどになっています。


 葉身細胞は楕円形~丸みのある六角形で、長さは8~15μm、厚壁です(上の写真)。

2017-08-22

ヤブキリ


 写真は藪(やぶ)に棲むキリギリス、ヤブキリ Tettigonia orientalis です。 背面には頭頂から翅の先まで褐色の筋が見られます。
 写真はオスで、メスは真っ直ぐに伸びる長い産卵管を持っています(こちら)。


 樹上生活で枝から枝へと渡り歩くのに適した長い後脚、獲物を捕らえるのに適した鋭い刺を持つ前脚と中脚、それに活動は夜が中心ですから、長い触角は夜の闇を探るのに役立つのでしょう。


(2017.8.22. 堺自然ふれあいの森)

2017-08-21

検索表に基づくミズゴケの仲間の同定例


 奈良県大和郡山市産のミズゴケ(上の写真)の同定を依頼されましたので、検索表に書かれている語句の解説も兼ねて同定の道筋を記事にまとめてみました。 使用したのは「滝田謙譲:北海道におけるミズゴケの分布及びその変異について」の中にある検索表(下はその一部で、今回の同定に使った部分のみ)です。 タイトルは「北海道における」となっていますが、日本産のミズゴケのほとんどの種が扱われていて、それぞれの種についての図も多く、ミズゴケを調べるにはとても便利です。 なお、平凡社の図鑑にある検索表も使ってみましたが、同じ同定結果になりました。


 平凡社の図鑑では、日本産のミズゴケは1属で約35種となっています。 このように1つの属の中に多くの種が含まれる場合、属と種の間に「節」という階級を設けることがあります。

 検索表に従えば、まず茎や枝の表皮細胞を調べることになります。


 茎から枝が出ますが、横に伸びる開出枝と下に伸びる下垂枝の2種類の枝があるのがミズゴケの仲間の特徴です。 葉も、開出枝に鱗片状についている枝葉と茎についている茎葉とは、ずいぶんと形態が異なっています。
 上は乾いた状態の写真です。 茎の表面が白っぽく見えるのは、茎の表皮に空気が入り込んでいて、そのために乱反射しているためでしょう。 茎のあちこちが黒っぽくなっているのは、写真の状態にするために茎葉を取り去った跡です(茎葉も後に調べます)。
 この表皮を剥がして顕微鏡で観察します。 ちなみに湿った状態にすると茎葉にも茎の表皮にも水が浸み込んで半透明になって判別し難くなり、柔らかくなって剥がしにくくなります。


 上が表皮を剥がした後です。 このミズゴケの表皮の無くなった茎は茶褐色~黒褐色をしています。


 上は茎の表皮を顕微鏡で観察した像です。 特に写真の下の方がゴチャゴチャしているのは、表皮が多層になっているからです。
 表皮細胞には細いらせん状の肥厚が見られます。 このらせん状の肥厚はミズゴケ節を他の節から区別できる特徴になります。
 乾いた表皮に水を落として検鏡していますので、たくさんの気泡が入っていますが、写真の上の方の気泡はレンズの役割をしてらせん状の肥厚を強調してくれています。

 次に枝葉の細胞に注目です。


 ミズゴケの枝葉は細長い葉緑体を持った細胞(葉緑細胞)と、水を蓄えておく大きな透明細胞が交互に並んでいます(上の写真)。 透明細胞は強度を保つために線状肥厚を持っています。 この葉緑細胞と透明細胞の接する壁に多くの乳頭または突起があればフナガタミズゴケまたは疣ミズゴケになるのですが、上の写真のようにこの壁が平滑であればムラサキミズゴケまたはオオミズゴケということになります。
 ムラサキミズゴケにはふつう紅色の部分がありますから、ここで調べたミズゴケはオオミズゴケだろうということになりますが、念のために枝葉の横断面を観察しました(下の写真)。


 上の枝葉の断面では、写真の上方が腹面(枝に面している側)で、下方が背面になります。 葉緑細胞と透明細胞が交互に並んでいますが、葉緑細胞は狭二等辺三角形で、その底辺は腹面側にあります。 このような特徴はオオミズゴケのもので、ムラサキミズゴケの葉緑細胞は楕円形で、透明細胞の間に埋まったようになり、葉の背面にも腹面にも出ていません。

 以上、検索表に基づいて調べてきましたが、もう少しオオミズゴケであることの確認を兼ねて、葉の特徴を見ておきます。


 上は茎葉です。 色の濃くなっている所は葉が皺になって折り重なってしまった場所です。 一般に、ミズゴケの仲間はその茎葉に特徴がよく出ます。 オオミズゴケの茎葉は舌型で、縁に舷はありません。


 上は枝葉の先端付近を腹面から撮ったものです。 先端は僧帽状となり、葉縁は内曲しています。 下は上の赤い四角で囲った部分の拡大です。


 先端付近の背面には赤い丸で囲ったような小歯状突起が見られます。

◎ オオミズゴケはこちらにも載せています。 形態的に少し異なったように見えるところもありますが、個体差や生育環境の違いによるものでしょう。

2017-08-20

キオビコシブトヒメバチ



 ヤブガラシの蜜を吸うキオビコシブトヒメバチ Metopius (Metopius) browni です。 前回は上からしか、今回は横からしか撮れませんでした。
 前回も今回もヤブガラシですが、よく見られる場所は草むらのようです。

(2017.8.11. 堺自然ふれあいの森)

2017-08-19

アカガネコハナバチ(メス)


 前に載せたアカガネコハナバチ Halictus aerarius のメスは体の半ばが花に埋もれていましたので(こちら)、全身のはっきりした写真を載せておきます。
 この蜂は地中に営巣しますが、春先に孵った娘蜂は生まれた巣で女王である母親と共に暮らします。
 真社会性昆虫とは、①複数世代の同居、②不妊カーストの存在、③共同育児の3条件が満たされている昆虫ですが、蜂群を維持したまま越冬できるミツバチの社会の一歩手前まで来ている蜂の一種と言えるでしょう。
 写真のハチは翅の痛みも無く美しい姿をしています。 冬を越して苦労した女王蜂ではなく、春に生まれた娘蜂なのでしょうね。

(2017.8.11. 堺自然ふれあいの森)

2017-08-18

オダカグモ


 どうにか手が届く高さの葉の裏に小さなクモがいました。 仔グモは撮っても名前の分からないことが多く、スルーしてしまうことが多いのですが、見ると卵のうを持っています。 成体なら撮っておこうかと手を伸ばして撮ったのが上の写真です。 もう少しよく見ようと枝を下げると、卵のうを置いて逃げてしまいました。
 帰宅後に拡大してみると、腹部がなかなかおもしろい形態をしたオダカグモ Chrysso argyrodiformis でした。 上の写真はちょうど横から撮ったことになり、腹部がねじれているようにも見えますが、これで正常で、透明感のある方が下(腹面)になります。

(2017.8.11. 堺自然ふれあいの森)

2017-08-17

ナミガタタチゴケの葉


 ナミガタタチゴケ Atrichum undulatum はスギゴケの仲間で、和名は葉に波状の横しわが見られるところからでしょう。 普通種すぎて、このブログでコケを載せはじめた初期に一度載せたきりで(こちら)、スギゴケ科の特徴である薄板の様子も、葉の断面では載せていませんでした。 そこで今回は葉をもう少し詳しく撮ってみることにしました。


 上が葉の断面です。 ナミガタタチゴケの薄板は中肋上に4~6列あり(上の写真では5列)、高さは3~4細胞です。
 一般に蘚類の中肋は多層の細胞からなっています。 中肋の各部の名称も併せて入れておきました。 ガイドセルは水分を導く役割を持っていると考えられています。 ステライドは厚壁の細胞からなる組織で、平凡社の図鑑等にはその役割の記載はみつかりませんが、強度を保っているのでしょう。


 上は葉を横やや斜め下から撮ったものです。 葉縁には対になった歯が並んでいます(葉縁と重なっている所は分かりにくいのですが、赤い円で囲った所などではよく分かります)。 また葉の裏(背面)には横じわに沿って歯が並び、中肋背面にも葉の上部を中心に歯が見られます。


 上は葉の背面の横じわに沿った歯です。


 上は葉の上部の中肋背面の歯を撮ったものです(3枚の写真を深度合成しています)。

(2017.8.11. 堺市南区豊田)

2017-08-16

アオマツムシの幼虫


 上のようなバッタ目がいました。 翅が全く無く、カネタタキ類のメスかとも思いましたが、産卵管がありません。 悩みながら他にもいないかと近くに落ちていた葉をめくると・・・


 裏向きで落ちていた葉に上のような虫がくっついていました。 小さな翅があり、幼虫でしょう。 1枚目の写真のものとは体の色も違うし、最初は別種だと思いましたが、触角や腹部の様子がよく似ています。
 1枚目のものと2枚目のものが同種で2枚目の方が齢が進んでいるとすれば、成虫は緑色のはずです。 そんなことを思いながら見ていると、この触角を揃えて伸ばし後脚も伸ばして葉にくっついている姿はどこかで見た気がしてきました。 そこでやっとアオマツムシの幼虫ではないかと気づきました。 帰宅後に調べてみると正解のようです。

(2017.8.8. 堺自然ふれあいの森)

 下は以前撮ったアオマツムシ Truljalia hibinonis のメスです。 長い触角は揃えて体の下に入れています。

2014.9.26. 堺自然ふれあいの森


2017-08-15

アカサシガメの幼虫


 前に「アカサシガメの幼虫?」として載せた7月11日撮影のものと同種で、ほぼ1ヶ月遅く、齢が進んでいます。
 そらさんの所に載せられているもの(こちら)と同種と思われ、そらさんは「?」を外しておられるので、私も今回はタイトルから「?」を外しました。

(2017.8.8. 堺自然ふれあいの森)

2017-08-14

アオバハゴロモ


 アオバハゴロモ Geisha distinctissima を正面から狙ってみました。 属名になっている「芸者」は芸妓のことでしょうが、このように撮ると、美しい姿よりかわいい顔が印象的です。


 少し下から撮ると、食餌中なのか、口吻が見えました。


 上は別の日に撮った、ガラスを通しての腹側からの写真で、口吻がよく分かります。


 いろいろ撮っていると頭を下げて体を低くしはじめました。 いつでも跳んで逃げられる姿勢でしょう。

(2017.8.11. 堺自然ふれあいの森)

◎ アオバハゴロモはこちらにも載せています。


2017-08-13

ケチョウチンゴケ


 避暑を兼ねて水のちょろょろと流れる谷筋を散策。 上はそこにあったケチョウチンゴケ Rhizomnium tuomikoskii です。


 場所は1月に撮ったケチョウチンゴケとほとんど同じ所です。 1月の時よりも葉の上の仮根も無性芽も少ないのは、春にできた新しい葉の上に仮根や無性芽が作られつつあるところだからでしょう。


 葉は幅広い倒卵形またはうちわ形で、長さ6mmほどです。


 上は葉先付近です。 中肋は葉先近くに達し、葉の先には小さな突起が見られます。 葉縁は全縁で2~5列の舷があります。


 葉身細胞はやや長い六角形で、壁は一様に肥厚しています。


 上は葉の上にあった仮根です。 苔類の仮根は単細胞ですが、蘚類の仮根は多細胞です。

(2017.8.11. 堺市南区豊田)

2017-08-12

シベリアカタアリ


 上はシベリアカタアリ Dolichoderus sibiricus でしょう。 樹上性のアリで、「堺自然ふれあいの森」では、2階建ての「森の館」の屋上から樹間を延びる木道の手すりなどでよく見かけます。
 下もシベリアカタアリだと思いますが、模様は個体差だとしても、形態が少し違うようにも見えます。 もしかして女王アリかとも思ったのですが、シベリアカタアリの働きアリと女王アリの違いを書いたものを見つけられませんでした。



(2017.8.8. 堺自然ふれあいの森)

2017-08-11

アシブトハエトリ



 ハエトリグモとしては大型のアシブトハエトリ Pancorius crassipes です。 林内の樹上にいるクモのようですが、「堺自然ふれあいの森」の屋上から木の間を通って延びる木道の手すりにいました。

(2017.8.8. 堺自然ふれあいの森)

2017-08-10

ベニシジミ(春型と夏型)



 ベニシジミ Lycaena phlaeas は年に数回発生しますが、春に発生する成虫(春型)と夏に発生する成虫(夏型)は色が異なっています。
 上は 2017.8.8.に堺自然ふれあいの森で撮影したもので、下は同じ所で 2016.4.22.に撮影したものです。 下の写真では翅の表がわずかしか写っていませんが、夏型(上の写真)は春型(下の写真)に比較すると、黒褐色部分が太く、黒い斑点も大粒です。
 これらの色の違いに生態的な意義はあるのでしょうか。 単純に考えると黒い方が熱の吸収が多く、体温を上げる必要のある春に黒い方が適しているように思うのですが・・・。


 上は交尾中ですので、オスとメスが写っているはずです。 メスの方が翅が丸いので、左がメスで右がオスでしょう。


2017-08-09

キイロスズメバチ

 キイロスズメバチ Vespa simillima  xanthoptera はこれまでに、ニホンミツバチの巣を襲っているところ(こちら)やスズメバチの見分け方(こちら)など、何度か取り上げていますが、3方向からの特徴を捉えた写真はまだ載せていなかったようです。




 キイロスズメバチはスズメバチの中でも気が荒い方ですが、上はお休み中で、触角を下げているうちは近づいても大丈夫だと思っているのですが・・・。

(2017.8.4. 堺自然ふれあいの森)