2017-11-10

エゾフタマタゴケ?


 新しく伸びた葉状体に雨水を十分吸い込み、透明感が美しいフタマタゴケ属 Metzgeria です。 ちなみに、属名は人名に由来しています。


 上は腹面から見たところで、葉状体の縁や中肋などに長毛がたくさん見られます。 全国的な普通種であるヤマトフタマタゴケにしては、少し長毛が多すぎるし、透明感も強すぎるような気もするのですが・・・。
 葉状体の腹面にはカリプトラ(赤色の矢印)や無毛小球(黄色の矢印:雄枝)が見えます。


 上は葉状体の断面で、写真の下方が腹面です。 中央の太い部分が中肋で、そこから左右に1細胞層の翼部が伸びています。 中肋の腹面がモヤモヤしているのは、腹鱗片が単細胞性の粘液毛になっていて、そこにいろんなものがくっついているからでしょう。
 下はこの中肋の部分を偏光顕微鏡で撮ったもので、細胞壁が明るく写っています。


 フタマタゴケ科にはフタマタゴケ属( Metzgeria )のほかにケフタマタゴケ属( Apometzgeria )があります。 ルーペ的には前者の葉状体の背面には毛が無いのに対し、後者は背面にも腹面にも毛があるのですが、細胞レベルでは、中肋部の横断面で、前者では表皮細胞が内部細胞より大きく薄壁であるのに対し、後者では表皮細胞と内部細胞との間に差がありません。
 以上のことから、写真のコケはフタマタゴケ属には違い無いのですが、問題はここからです。 平凡社の図鑑のフタマタゴケ属の検索表に従えば、中肋部腹面の表皮細胞が2(~3)細胞幅ならヤマトフタマタゴケ M. lindbergii に、3~5細胞幅ならエゾフタマタゴケ M. conjugata になり、写真は後者のように見えます。 しかし、よく見られるヤマトフタマタゴケとは異なり、エゾフタマタゴケに関しては、分布は北海道~九州らしいのですが、平凡社の図鑑にも検索表にあるだけで種別の解説は無く、詳しいことが分かりませんので、タイトルには「?」をつけておきます。

(2017.11.8. 宝塚市・武庫川渓谷

※ ヤマトフタマタゴケはこちらに載せています。

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