2017-11-19

ヒダゴケ


 写真はヒダゴケ Ptychomitrium fauriei だろうと思います。 先日載せたチヂレゴケのすぐ傍にありましたが、さすがに(?)同じ属、よく似ています。



 図鑑には蒴柄は帯赤色とあります。 上の写真でも、たしかに蒴柄だけ残っている古いものは赤みを帯びているようですが、若い胞子体では赤みは感じられません。
 上の写真は少し乾きかけで、チヂレゴケと同様、葉が巻きかけていますが・・・


 乾き具合によって、葉の上部が二つ折りに折り畳まれる傾向にあるようです。



 比較的短い葉では卵形の基部から線状披針形に伸びていますが、比較的長い葉では全体が線状披針形になるようです。 上の2枚の写真は比較的汚れの少ない茎の上部の葉を選んだのですが、鋸歯があります。 ヒダゴケの葉は基本的には全縁ですが、若い葉ではこのように鋸歯の見られることがあるようです。


 葉の中部の葉身細胞の長さは、チヂレゴケが 10μmほどであるのに対し、ヒダゴケでは7μmほどです。


 蒴はまだ若かったのですが、帽を無理やり脱がしたのが上です。


 上は胞子です。 胞子を散らばらせるためにカバーグラス上から押したのですが、胞子が若かったために、つぶれて内容物が小さな粒子になって散らばってしまった胞子が多くありました。 それでもたくさんの胞子が残りましたが、その径は 10μmもありません(上の写真)。 チヂレゴケに比べると、かなり小さな胞子です。

(2017.11.8. 宝塚市・武庫川渓谷)

2017-11-17

チヂレゴケ


 雨にぬれたチヂレゴケ Ptychomitrium sinense です。 濡れたコケは葉をいっぱいに広げて美しいのですが、表面が水に覆われると細かいつくりが分からなくなります。 また、コケは乾いた時の方が違いがよく分かります。 このコケの「縮れ」の特徴も、濡れると分からなくなります。



 上は少し乾きかけたところで、葉先が巻きかけています。 もっと乾くとこちらのように縮れます。 また、蒴をすっぽり覆っていた帽は、はちきれていて、まもなく取れてしまうのでしょう。



 葉は全縁で、中肋は葉の先近くに達しています。


 上は葉身細胞で、左は中肋です。


 蒴の帽を外してみました(上の写真)。 蓋には長い嘴があります。


 蒴歯は密にパピラで覆われています(上の写真)。


 胞子の径は 20μmほどです(上の写真)。 ちなみに、チヂレゴケとよく似た同じ属のヒダゴケの胞子の径は 10μmほどしかありません。

(2017.11.8. 宝塚市・武庫川渓谷)

2017-11-15

オンタケクサリゴケ


 写真はオンタケクサリゴケ Cheilolejeunea khasiana です。 10月1日に兵庫県新温泉町の浜坂で採集されたもので、京都府立植物園で実施された「苔 こけ コケ展 2017」の顕微鏡観察ワークショップで使用されたものの残りの一部をいただきました。



 上の2枚は腹面から見たところです。 背片は内曲し、長さは茎に隠されている部分も含めて 0.5~0.8mmほどです。 ポケット状の腹片は、背片の一部が茎に隠されているために背片の半分ほどの長さのように錯覚しますが、下の2枚の写真のように背片の1/3~2/5長です。 腹葉はほぼ円形で、2/5ほどが狭く2裂しています。



 背片はほぼ卵形で、腹片の先端は切頭です。


 上は腹片の先端部です。 歯牙は卵形の1細胞からなりますが、不明瞭で確認できない腹片も多くありました。
 上の写真は、立体的な腹片全体の様子を表現するために、9枚の写真を深度合成しています。 しかし深度合成は立体を平面的な写真にしてしまうため、9枚のうちの3枚のみで深度合成し直したのが下の写真です。
 

 上の写真で見ると、歯牙は腹片の奥の部位にあることが分かります。 そのために葉によっては歯牙が手前の細胞に隠され、判別できなくなっていることも多いように思います。


 上は腹葉にピントを合わせています。 腹葉の基部から仮根が出ています。


 上は葉身細胞です。 油体は大形でブドウ房状です。 平凡社の図鑑では油体は各細胞に3~4個となっていますが、上の写真のようにほとんどの細胞の油体は1個でした。


2017-11-14

ミズゴケモドキ


 上は北八ヶ岳産のミズゴケモドキ Pleurozia purpurea です。 京都府立植物園で実施された「苔 こけ コケ展 2017」に来られた北八ヶ岳の山小屋のSさんからいただきました。
 どこがミズゴケに似ているのかよく分かりませんが、植物体は赤色を帯びていますから、もしかしたら紅葉したミズゴケの仲間の群落と雰囲気が似ているのかもしれません。 とにかく珍しいコケで、新潟県と長野県の高山にしか分布していないようです。
 上の写真、斜め下から腹面を見ているようですが、じつは細長い三角形に見えるのが背片で、その背片を包み込んでいるのが腹片ということのようです。 複葉があればどちらが腹面かはっきりするのですが、ミズゴケモドキ科には腹葉はありません。


 ですから、上の写真は腹面から腹片を見ていることになります。 最初の写真と併せて見ると、腹片の先は鋸歯状になっているようです。
 このコケは背片の向軸側がおもしろいので腹片を持ち上げたのが下の写真です。


 背片は袋状になっていて、向軸側には開口部があります(上の写真)。


 上は背片だけを切り離して向軸側から深度合成したものです。 開口部(写真中央の暗くなっている部分)には弁状の蓋が見られます。 写真左下は、茎や腹片につながっていた所ですが、丸くなって穴のように見えています。


 上は葉身細胞で、大きなトリゴンがあります。 油体は球形で微粒の集合です。


2017-11-13

ヒメトサカゴケ


 写真はヒメトサカゴケ Chiloscyphus minor です。 相変わらず葉縁にたくさんの無性芽をつけていて、本来の2裂している葉の様子(こちら)がほとんど分かりません。 下は無性芽の少ない所を選んで顕微鏡で撮影したものです。 無性芽が重なっているとよく分かりませんが、下の写真を見ると、無性芽は2細胞からなるようです。


 ヒメトサカゴケを指で擦ると、いいにおいがします(においの感じ方には個人差があります)。 2017.11/10-12 に京都府立植物園で実施の「苔 こけ コケ展 2017」でも、本種とカビゴケのにおいの比較は人気がありました。 しかし上の写真を見ても、においの原因となる物質を蓄えているような所はみつかりません。 におい分子は細胞内に分散しているのでしょうか。 また、このにおいは生態的に何か意味を持つのでしょうか。


 上は腹葉です。


 上は葉身細胞です。

(2017.10.4. 奈良県 川上村)