2015-08-15

コモウセンゴケ?

 モウセンゴケの仲間は関西にはモウセンゴケ( Dorosera rotundifolia )、コモウセンゴケ( D. spathulata )と、その両者の雑種起源の独立種と考えられるトウカイコモウセンゴケ( D. tokaiensis )が存在しています。
 中村ら(1991)によれば、この3種は染色体数が異なり、モウセンゴケは 2n=20、コモウセンゴケは 2n=40、トウカイモウセンゴケは 2n=60 です。 トウカイコモウセンゴケがコモウセンゴケの関西型として認識されだしたのは1950年代後半ごろからですが、東海、近畿地方の植物誌などでコモウセンゴケとして扱われてきたもののほとんどは、現在の分布状況から判断すると、トウカイコモウセンゴケであると思われるということです。
 これまで葉形についてコモウセンゴケはヘラ型、トウカイコモウセンゴケはスプーン型とされてきました。 しかし、東海地方では通常確かにそうですが、近畿地方ではトウカイコモウセンゴケでもヘラ型的な個体が多く、両者の形態上の識別点として有効なのは托葉の形態のようです。
 その托葉の形態は、モウセンゴケは多裂片状、コモウセンゴケは大きく3片に裂け、中央の1片がさらに浅く2片に裂けているものが多く、トウカイコモウセンゴケは両者の中間的な形態で、4~多裂片状であるようです。
 その他のコモウセンゴケとトウカイコモウセンゴケの違いとして、コモウセンゴケは葉のかなり基部まで腺毛が発達しているのに対し、トウカイコモウセンゴケは葉の基部にはほとんど腺毛が発達しません。 また葉の色については、コモウセンゴケの葉は薄い緑色~薄い赤色で、枯れた葉は薄茶色をしているのに対し、トウカイコモウセンゴケの葉はほとんどの個体で赤みを帯びていて、枯れた葉は焦げ茶色をしているということです。

 さて、大阪南部(信太山ではありません)に、下の写真のようなモウセンゴケの仲間が見られます。 コモウセンゴケなのかトウカイコモウセンゴケなのか、以前から気になっていましたので、染色体数は調べていませんが、形態を調べてみることにしました。


 モウセンゴケの仲間は湿地の植物のイメージですが、写真の場所は水を通しにくい粘土層の上に位置し、水がしみ出てくる場所です。



 托葉については、上の写真にも写ってはいるのですが、もっと大きくはっきり撮ろうとしても、緑の葉を背景に小さな半透明の托葉ですので、カメラのファインダーではピント合わせが難しく、すっきりした写真は1枚も撮れませんでした。
 下は托葉を切り離して撮ったものです。



 大阪府下ではトウカイモウセンゴケが多いようですが、以上の結果からは、写真のものはコモウセンゴケだと思うのですが、どうでしょうか。


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