2018-01-30

カラヤスデゴケの腹片


 上はカラヤスデゴケ Frullania muscicola でしょう。 これまで何度か載せてきましたが、いつもどこがヤスデなのか不思議に思っていました。 しかし、上のように撮って大きな画面いっぱいにして見ると、ヤスデの大群がモゾモゾと迫ってくるように見えなくもありません。
 それはともかく・・・


 上はカラヤスデゴケを水に浸けて腹面から撮ったものですが、腹片がとても目立ちます。 もちろん腹葉もあるのですが、腹片よりもずっと薄い腹葉は水中では目立たなくなってしまいます。
 上の写真では、袋状になった腹片から気泡が出てきています。 このようにして腹片の中にあった空気は次第に水に置き換わり、腹片は貯水にも役立つのでしょう。(以上、2018.1.19. 堺市南区豊田)
 いずれにしても、カラヤスデゴケの腹片はとてもおもしろい形をしていますが、何度もカラヤスデゴケを観察したり調べたりしているうちに、この形のでき方が分かってきましたので、以下にまとめておくことにします。


 上はいろいろな苔類の葉を並べた図で、全国農村教育協会発行の『校庭のコケ』p40の図を2段に変えて色をつけたものです。 上の図のように2裂していることが分からない葉もありますが、発生学的には茎葉体苔類の葉は2裂しているのが基本のようです。 赤く色をつけたところが発生学的には同じ起源て、苔類の腹片は、この2裂している葉の下片(赤い色の部分)が腹側に折れ曲がったものとして理解できます。
 2枚目のカラヤスデゴケの写真の腹片は勾玉(まがたま)のような形に見えますが、こちらの顕微鏡写真から分かるように、これは上の図の下段右端の袋状の腹片がさらに変化したものです。 カラヤスデゴケでは、このような“勾玉”が目立つ腹片が一般的ですが、幼体などではこちらのように、上の図の下段左端のロバの耳状の腹片もよく見られます。


 上は 2017.11.8.に宝塚市の武田尾にあったカラヤスデゴケの顕微鏡写真で(深度合成しています)、ほぼ中央に写っている腹片は袋状で、“勾玉”ができつつあります。
 以上のことをまとめると、カラヤスデゴケの腹片の“ロバの耳”と“勾玉”の関係は下のようになるでしょう(私の原図で、腹葉は略してあります)。




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